すごく面白いと言う話しはずっと聞いていたのですが、
どうしても韓国の歴史物であるイメージから見られずにいました。
タイトルとイメージ画を変えたら絶対もっと多くの人が見てくれるドラマだと思うのは私だけでしょうか?
これほど見る前と見た後で印象の違うドラマも珍しい。
これから見ようかどうしようか迷っている人向けに本作のおすすめポイントを少しネタバレも含みつつ紹介します。
歴史物ではないので安心して
まず、最初に伝えたいのは、本作は歴史物ではありません。
韓国の王朝は映像としては多く出てきますが、それはあくまで「長い時間」を表現するための手段で本作は歴史を問うような作品ではありません。
王朝の話しとかよくわからないし、歴史物超大作みたいなもの苦手と言う方もご安心ください。
本作は、ラブコメです。
安心して笑う覚悟と最後は泣く覚悟をして見てみてください。
第一話の途中まで初心者に厳しい展開
本作を最後まで見てから第一話を見返すといろんな伏線だとか要素が詰まっていて、あっここにもこんな伏線引いてたんだ!と感動するのですが、最初見た時は正直ハードル高い。
いきなり、王朝みたいな話しと戦いの話し王様に殺される話しなど、どこまでどうついていったらいいの?と思う展開で歴史物じゃないって言っていたくせに嘘つき!!と言いたくなる。
もし、最初でつまづきそうな方は王朝時代の話は以下だけ覚えて先に進んでしまっても大丈夫です。
(第一話の37分くらいまで歴史ものっぽい映像なので飛ばしてしまっても大丈夫)
900年前に王様ワン・ヨと王妃キム・ソンがいて、王妃の兄の将軍キム・シンがいた。キム・シンは民衆に人気で王様はキム・シンを妬ましく思っていた。(男の嫉妬って本当に怖い。)そして、王様の側近が悪い男で、王様をそそのかしてキム・シンとその妹の王妃を殺してしまう。将軍キム・シンは、たくさんの人々を殺していたのでその罪の代償として「トッケビ」となって900年も生き続けることになった。
王様 → 将軍(のちにトッケビ)と その妹王妃を殺す
の関係
という内容が、歴史ものとして描かれている部分の話しです。
で、900年たった現代(だと思われる)にまだ生き続けている「トッケビ」こと将軍キム・シンは自分を「無に返してくれる」と言われている「トッケビの花嫁」を探しているという話。
現代の主要な登場人物は、
・トッケビ:キム・シン(コン・ユ)
・トッケビの花嫁:チ・ウンタク(キム・ゴウン)
・死神:名前無し(イ・ドンウク)
・花嫁のバイト先のチキン店社長:サニー(ユ・インナ)
の4人。いろんな人が出てくるので覚えきれない人はこの4人だけとりあえず覚えておけば大丈夫です。
手間がトッケビの花嫁、奥がトッケビ。
左が死神、右がサニー。
そもそも「トッケビ」って何?
日本人にとっては、そもそも当たり前みたいに語られる「トッケビ」って何?となりませんか?
映像見ているとどうも日本でいうところの鬼みたいな感じだけどいったい何?と。
私もわからなかったので調べたのですが、「朝鮮半島に伝わる精霊、妖怪。朝鮮時代以前には具体的な姿形は表象されず、鬼火などの神霊的な存在として伝承された」とのことで、ざっくりと妖怪とか鬼みたいなものと捉えておいて良いのではないかと思います。
何がそんなに面白いの?
輪廻転生と時間について考えさせられる
「その年、私たちは」や「梨泰院クラス」などは、ニーチェの永劫回帰(何度でも同じ人生を繰り返す)という思想を元に作られていましたが、「トッケビ」は、東洋の思想である輪廻転生という思想を元に作られています。
輪廻転生は、人は生まれ変わってまた「違う」人生を歩む。という考え方で日本人にとってはこちらのほうが馴染みがある思想かと思います。
本作は、基本的にラブコメですので、主人公トッケビ:キム・シンとトッケビの花嫁:チ・ウンタクのラブラブ度合いや喧嘩などを楽しむものではあるのですが、作品の大きなテーマとして「時間」というものをどう捉えるかが問われます。
トッケビにとっては、900年という一続きの年月ですが、他の登場人物にとっては、二度目や三度目の人生の数十年の年月です。
他の人から見るとなんでこの2人はこんなに惹かれ合っているの?と思うけど、前世まで遡るとその2人が惹かれ合うのは当然だったり、突然訪れる幸運も前世の出来事が関係していたりと時間を目の前の数十年だけで考えているのとは別な世界が見える。
現代で会社の面接を受けに来た過去の部下。
韓国に一重ブームを巻き起こしたと言われるキム・ゴウンさん
トッケビの花嫁として出演されているキム・ゴウンさん
一重で、パッとみた感じすぐに美人!という顔立ちではないものの、見れば見るほど好きになってしまう不思議な魅力をもった俳優さんだと思うのですが、後半にかけての彼女の泣きの演技は本当に絞り出すような悲しみの表現でそこまで感情移入していなかった人でも引き込まれてしまうような演技です。
役柄としても、幼い頃に母親を亡くし、幽霊が見えるせいで友達もできずずっと一人で悲しい思いをしてきて、トッケビや死神と出会ってやっと家族のような存在ができたときの笑顔やそれを失うかもしれない時の悲しみなど豊かな感情表現に、トッケビ役のコン・ユさん死神役のイ・ドンウクさんのイケメンっぷりが相まって、3人が作る空気が何度見てもまた見たくなる。
主演以外の人々も魅力満載
本作の主演は、トッケビ役のコン・ユさん、トッケビの花嫁役のキム・ゴウンさんだと思うのですが、脇を固める役者さんも本当に素敵で、人によっては、死神役のイ・ドンウクさん、花嫁のバイト先のチキン店社長サニー役のユ・インナさんの恋の行方のほうが好きな人もいるのではないでしょうか。
私も死神さんの恋のほうがエピソードとしては好きです。
トッケビの花嫁の高校時代の唯一の友人役として、コ・ボギョルさんが出ています。コ・ボギョルさんはハイバイママで新しいママとして登場し無表情で子供との接し方もわからないお母さんとして本当に素晴らしい演技をされていますが、本作ではちょい役ではありますが、その美しさは健在でした。
高麗時代王妃役で出ていたキム・ソヒョンさん。一瞬若い頃の堀北真希さんかと思うようなきれいな王妃役でした。
6話目以降の怒涛の展開
正直私も6話目までは横で流しながら別な作業をしていたのですが、6話目の最後にトッケビが死ぬ覚悟をして、トッケビの花嫁に胸に刺さった剣を抜いてもらおうとするシーン以降は展開がどんどんスピードアップします。
気づけば13話目まで行き着く暇なく駆け抜け、あと3話で終わりじゃん!と気づくことになります。
しかも、恐ろしいことに、ここから更に泣けるエピソードがラスト3話でてんこ盛り。
ネタバレになってしまうので、詳細はひかえますが、覚えている人、忘れてしまった人、覚えているけど忘れたふりをしなければならなかった人、それぞれの悲しみと愛情が交差して、13話目までとはまた違ったドラマの見方ができます。
ある意味では、「生まれ変わる」というのは何も肉体的なものだけでなく記憶や意識が続いていなければ「生まれ変わった」とも言えるのかもしれません。
3歳時のように泣くキム・ゴウンさんの演技に「好きな人がどこかへ行ってしまう悲しみ」以上の「大切な家族がいなくなってしまう」子供のような悲しみを感じて本当に涙が止まらくなってしまいます。
「生きる」ことの意味を考えさせられる
900年死ぬことのできないトッケビ。常に死がつきまとうトッケビの花嫁。死を見送る死神。
死神の言葉として語られる「人は4度生まれ変わる。1度目は種まき、2度目は水まき、3度目は収穫、4度目は食べる」
この思想が本作の随所に登場します。
トッケビの花嫁:チ・ウンタクは言います。
「私の人生は何回目?」
本作の中で、「死」は「生」の終わりではなく、「生」と同じくらい「死」を迎えることは大事であり、「死」が大事だからこそ、「生」がより大事で「今日が最後の日だとおもって生きる」というメッセージが伝えられます。