結論
「有識者」や医者が必ずしも正しいとは限らない。
我々自身が、事実に基づき原因と結果を正しく認識する能力が今の時代もっとも求められる能力かもしれない。
統計の知識なく生きてきてしまった40代
「統計学」という言葉を聞いたことはあると思いますが、「統計学」って一体何なのか知っていますか?
私は恥ずかしながら40歳を超える歳まで統計学なんて知っているよみたいな顔して生きてきましたが、全く勉強せずに生きてきてしまいました。
改めて今からでも勉強しようといくつか統計学の本を読み始めています。
本書は統計学がなぜ必要なのかから始まり、統計学を知らないとどうなってしまうのか(あみだぐじで負ける確率が格段に上がるなど)含めて、なるほどこれは統計知らないとこれからの世の中「仕事できない人枠」に完全に入ってしまうな、と思わされる本です。
19世紀に起こったコレラと今の新型コロナ
本書の中で、19世紀に起こったコレラの騒動の中で、統計を使わず「有識者」や医者たちが、全く見当違いの対策を打ち、結果的に被害を拡大させていってしまった例を出していますが、何だかとても今の状況と重なってしまいます。
原因不明の疫病を防止するための学問を「疫学」と呼ぶが、世界で最初の疫学研究は19世紀のロンドンでコレラという疫病に対して行われた。この疫学の中でも統計学は大きな役割を果たす。当時コレラはイギリス全土で4度の大流行を起こし、合計十数万人もの死亡者を出したと言われている。現在ほど科学技術が進歩していないにせよ当時のロンドンには高い教育を受けた科学者も医者も優秀な役人も十分にいた。彼らの多くは聡明で倫理的でもあっただろうが、残念なことにコレラの流行に対しては無力だった。というかむしろ場合によっては有害ですらあった。例えばある医者が提案したのは彼の調合した特別な消臭剤によってコレラが減らせると言うものだった。当時のロンドンは産業革命の真っ最中で農業で食べていけなくなった人々が都会へ押し寄せ工場で労働者として働くようになり始めた時期であった。急激な人口の増加に都市の発達が追いつかず、狭く不潔な地域に粗末な家がひしめき、その家の中に貧しい人が押し込められ、下水も整備されないためにゴミや排泄物が庭や地下室、道端といったそこら中にため込まれていた。当然その悪臭たるや悲惨なものだっただろうが、そうした臭い地域に住む臭い労働者たちの多くがコレラで死亡していたため、悪臭を取り除きさえすればコレラもなくなるのではないかと考えたのだ。さらにはもっと果敢にこの汚物を取り除こうとした役人もいた。彼は町中の汚物を片っ端から清掃し下水を整備し汚物を川へ流せるようにすると言う政策をとった。この役人が活躍したのは、おもにコレラの1度目と2度目の大流行中の間の期間だが、彼らの努力にかかわらず2度目の大流行時(死亡者数約7万人)は、むしろ最初の大流行時(死亡者約2万人)よりも大量の死亡者を出している。要するに知性も見識も十分にある彼らが知恵を絞って出したアイディアも、時間と労力をつぎ込んだ事業も、無駄か、もしくはむしろ有害だったのだ。
臭い地域でコレラが流行している! → 臭いの何とかすれば治るはず! → 拡大!
なんか似てません??
今の状況と。
なんでこんなことになったのか
何でこんなことになったのかわかりますか?
詳しくは本書を読んでいただければと思いますが、簡単に言ってしまうと、エビデンスもなく勝手に「臭いから悪い」と決めつけていましたが、本当は、水道を通ってコレラ菌が運ばれてしまっていたのでした。
疫学の父と言われているジョン・スノウさんは、コレラで亡くなった人々の家にヒアリングをし、同じような状況なのに発症する人としない人の違いを調べ、水道会社Aを使う人々と水道会社Bを使う人々で、1万軒あたりの死亡者数に明らかな違いがあることを発見し、死亡者数の少ない水道会社に変えた家ではピタリと感染を止めることができたという。
(残念ながら当時もこの意見はあまり受け入れられなかったようだが)
コレラ菌が発見されるのは、かなり後のことになるのだが、本当の原因が明らかになっていなくても、原因と結果が明らかになったことで、「感染を止める」ということに対しては必要十分な結果が得られたわけだ。
(ちなみに、下水を整備し汚物を川へ流したことで感染が拡大してしまった原因は、コレラ菌が川へ流れ出しその川の水から組み上げて水を供給していた会社の水を飲んでいたからだった。)
この話を知った上で、飲食店の営業を自粛する今の対策についてどう思いますか?
参考図書
リンク
今週の気になったニュース
パチンコ店も飲食店と同じように、本当に自粛すべき業種だったんでしょうか。
こんなに理由もなく簡単にいろんなことが何となくで決まってしまっていいんですかね。