【書評】善と悪のパラドックス

2021年6月15日火曜日

おすすめ本 書評

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善と悪なんていうと難しそうですが、いや待って、すごい面白い。

本書は、「人間ってどうして温和で優しい人が戦争とかになると急に残虐な行為が行えるの?」というとてもシンプルな問いに対して、動物としての人間の特性からどうやって人間が進化してきたのかを含めてその答えを考察していくという本。

考えてみれば、人間ってとても不思議な生き物ですよね。

他の生き物で、例えば、ライオンが戦争を初めて世界中のライオンを大量虐殺して大変なことになったなんて今のところ聞いたこともないけど、人間は平気で人間を大量に虐殺する。
一方で、困っている人がいたら助けるみたいなことを同じ人がやっていたりする。

こんなに矛盾だらけの生き物がどのようにして生まれてきたのかちょっと興味ないですか?

本書は、ハラリさんやアタリさんのように、人間が生物として生まれたホモサピエンスの時代から人間という生き物の特性を丹念に研究してくれています。

約5,000円とちょっと高い本なので、まずは図書館などで借りてみてから購入を検討してみてもよいかと。

種としてきわめて邪悪であると同時にきわめて善良でもある。

過去の残虐だと思われている人々も環境が違えば全く違う顔を持っていたとのこと。

 

アドルフ・ヒトラーはおよそ八○○万人の処刑を命じ、さらに数百万人の死の責任を負うが、秘書であったトラウデル・ユンゲによると、愛想がよく、気さくで、父親のようだったそうだ。
動物の虐待を嫌うベジタリアンで、飼い犬のブロンディを愛し、ブロンディが死んだときには慰めようもなく悲しんだらしい。

カンボジアの首相だったポル・ポトは、みずからの政策で約四分の一もの国民を死に至らしめたが、まわりからは穏やかに話す親切なフランス史の教師として知られていた。

ヨシフ・スターリンは、一八カ月に及ぶ投獄生活のあいだ、いつも驚くほど温和で、決して怒鳴ったり悪態をついたりしなかった。
立派な模範囚で、のちに政治的な理由から数百万の命を奪うことになるとは想像もできなかった。

ひどく邪悪な人間も穏やかな一面を持ちうる。
私たちは彼らの罪を正当化したり、赦したりしたくないあまり、やさしい面に共感することをためらうが、彼らはヒトという種に関する奇妙な事実を思い出させる。

人間はもっとも知的な動物というだけではない。
ほかに類を見ないほど複雑な道徳的性格の集合体なのだ。
種としてきわめて邪悪であると同時に、きわめて善良でもある。

参考図書



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まだ、解明されていない脳の機能はたくさんあるようですが、たぶんどんどん解明は進むんでしょうね。

解明が進めば進むほど、おそらく再現性も高くなる。

その昔、神様のせいにしていた災害がどんどん発生原因が明らかになって神様のせいにする必要がなくなったように、脳が解明されれば「倫理」や「道徳」なんて曖昧なものに頼らなくてもなぜ人間がこんなにも矛盾を抱えているのかわかるのかもしれませんね。

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