はじめに
本書の概要
井上泉(井上夢人)さんが、引越しの荷物を運ぶために友人のダダさんに車を出してくれるよう頼んだところ、ダダさんが車を持っている友人として連れて来たのが徳山諄一さんだった。三人は、思いつきで「バビル・イメージ・レストラン」と言う映像制作と写真撮影を請け負う会社を起こす。しかし、11ヶ月で事務所を閉じることになる。経営に関しても、営業に関しても素人な三人がなんとかなるだろう、と言う楽観的な気分で始めた会社だったので、ある意味、当然と言えば当然の結果だった。しかし、その11ヶ月の間、井上泉さんと徳山諄一さんは、暇を持て余すあまりくだらない会話を発展させて推理小説のネタ作りなどに興じていた。江戸川乱歩賞を取れば小説家になれるのでは?と言う安易な考えから江戸川乱歩賞を目指す。ふたりは、全くの素人であったため、「どうすれば小説って書けるのかな?」と話しあう。小説の書き方もわからないふたりは、とりあえず、自分たちが面白い、それも最高に面白いと思えるものだけを書こうと決める。そのために、まず推理小説につきもののトリックを起点として発想していく。誰もがびっくりしてワクワクするようなアリバイやトリックを発想するため、どちらかが何かを見たり聞いたりした話しを起点にどんなトリックが考えられるか?と徹底的に「転がした」。それはまさに共同作業だった。たくさんのアイデアがボツになり、やっと形になったと思ったアイデアは、実際に書いてみるとディテールの部分で不整合が起きたり、全く面白くなかったり、の繰り返しだった。その頃から、徳山諄一さんが素材を集めて、井上泉さんがまとめあげて書くと言うスタイルが出来上がる。その頃を井上泉さんが振り返り、岡嶋二人にとっての黄金期だったと言っている。全てにおいて、本当の意味での共同作業だった。
なんか、どこにでもある話しですよね。 みんなちょっとやってみる?というノリでやってみるだけやってみるまでは結構ある。
ただ、今となれば一般的かもしれませんが、「トリック」をまず考えて、そこから話を作っていくというスタイルはなかなか素人の時には思いつかないですよね、、
この時井上泉さんは、小説の書き方の本を読み漁っている。けれど結局一番身についた方法は、昔の人の本を模写する作業だった、と言っている。
何かを伝えるための文字数、行間の埋め方、改行のさせ方、セリフの入れ方など過去の偉人たちの文章を模写することが最も効率的に文章技術を向上させた。
幾度の挑戦の末、賞をいただける可能性が高いと出版社、新聞社から連絡が来てウキウキして電話を待っていると落選の連絡が。
しかし、次の年ふたりはやっと賞を取る。
実に始めての挑戦から7年が経過していた。
賞を受賞したふたりに待っていたのは、バラ色の小説家としての人生ではなかった。受賞翌日から出版社から届く依頼。果てしない締め切りの連鎖。もともとひとつのアイデアをふたりで話し合い転がし、練り上げるスタイルのふたりには、明らかに時間が足りなかった。
自然と分業作業にするしかなかった。徳山諄一さんが素材を集めて、井上泉さんがまとめあげて書く。
しかし、徳山諄一さんの素材は、しばしば、ほとんど締め切りに間に合うことはなくなった。
井上泉さんは次第に自分だけで書く小説が出るようになり。。
「けれど結局一番身についた方法は、昔の人の本を模写する作業だった、と言っている。」
とにかく、自分ができることをなんとかやってみる。この姿勢があるかないかなんだろうな。結局のところ、結果を出す人とそうでない人の違いは。
本書は、すでに中古本となっているようですが、本当に面白い本なので、小説書いてみたい!と一度でも思ったことがあるかたは手に取ってみると良いかと。